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動物別症例集 4ページ目

爬虫類両生類の代謝性骨疾患(MBD)

概要
主に爬虫類や両生類にみられる病気で、偏食のフクロモモンガでみられることもあります。
くる病や骨軟化症という骨疾患を引き起こすこともあります。

原因
低カルシウム血症が原因とされ、栄養不均衡(低カルシウム、高リン、ビタミンD不足)や、紫外線が必要な種では照射不足により起こります。

症状
成長不良や食欲不振、骨の菲薄化などが主な症状です。重度になるとけいれんを起こしたり、骨格が変形したりします。カメの場合は甲羅の変形やクチバシの過長がみられます。

治療
まずは飼育環境の見直しが必要で、症状に応じてカルシウムの注射や内服薬が必要な場合があります。


フェレットの異物による腸閉塞

概要
フェレットの消化器疾患ではよく見られる疾患です。
異物の種類は年齢により違いがあり、2歳以下の子は布、スポンジ、ゴムなどをよく飲み込んでしまいますが、中~高齢の子では自身の毛の塊(毛球)を詰まらせてしまうことが多いです。

症状
重度の場合は嘔吐、流涎、下痢、体重減少等の症状がみられますが、初めの頃は元気消失、食欲不振などの非特異的症状で気付きにくいです。

診断
基本的には画像診断(レントゲン、造影レントゲン、エコー検査)によって診断しますが、最終的には試験的な開腹手術で確定することもあります。

治療
開腹手術を行い、胃や腸を切開して異物を摘出します。


ハムスターの直腸脱

概要
過度にお腹に力が入ったときに直腸が肛門から飛び出してしまった状態になり、これを直腸脱とよびます。
ハムスターは直腸脱を起こしやすい動物として知られています。

原因
ひどい下痢や便秘、加齢などが原因となって起こります。
下痢にはウェットテイルと呼ばれる腸疾患や寄生虫が関わっていたり、便秘には腎不全や水分摂取不足などが関与していることがあります。

症状
飛び出してしまった腸は、うっ血や感染を起こしてしまいます。
ひどいときは腸が壊死してしまったり全身に感染がまわって、命にかかわることも多いです。

治療
なるべく早くに肛門内に戻します。
再脱出することも非常に多いので縫合糸で肛門を狭めるような処置も行います。
また、原因となるような疾患の治療も同時進行で行います。


ウサギのトレポネーマ症

概要
トレポネーマという糸状・らせん状の菌に感染することで起こる皮膚炎です。
ヒトの梅毒症と原因菌や症状が似ているため、ウサギ梅毒と呼ばれることもあります。

ヒトに感染することはありませんが、ウサギ間では交尾によって感染を広めていきます。
また、母ウサギから子ウサギへの接触でも感染することがあります。

症状
トレポネーマに感染後、ストレスや体調悪化などが引き金となり発症します。
発症すると陰部と口・鼻の周囲にかさぶた、潰瘍、水ぶくれなどを形成します。
くしゃみや鼻水がみられることもあります。
また、感染していても症状が出ないこともあり、他のウサギへの感染源になってしまうことがあるので注意が必要です。

治療法
抗生物質の投与により症状の改善が見られますが、完治することはなく、また何らかのきっかけで発症をくりかえしてしまいます。
一度発症してしまったウサギさんは残念ですが繁殖に供さないことが、病気の蔓延防止には有効とされています。


ボールパイソンの水疱病

概要
ヘビ類に多く見られる皮膚病で、水疱症、小疱性皮膚炎、壊死性皮膚炎、スケールロットなど、様々な名称があります。

原因
皮膚に細菌感染が成立すると発症します。
ケージ内の多湿や換気不足、不衛生、ストレスなどの環境要因と、ダニや寄生虫感染、免疫低下などの内的要因が関係することがあります。

症状
主に腹部の皮膚が赤くなったり、水ぶくれを形成し、それがはじけて潰瘍になったりします。
重度になると敗血症を引き起こし、命にかかわることもあります。

治療法
患部の消毒と抗生物質の投与がメインの治療法になります。
症状に応じて外用薬(塗り薬)を処方することもあります。
また、飼育環境の見直しも非常に重要です。


犬の橈尺骨骨折

トイプードル、チワワ、ポメラニアンなどのトイ犬種といわれる小型犬やイタリアン・グレーハウンドなどの前肢は細いため衝撃に弱く、抱っこ中に落下して骨折するケースや、ソファから飛び降りて骨折してしまうケースが多いです。
特に前腕部を構成する橈骨と尺骨をまとめて骨折することを橈尺骨骨折とよびます。

骨折の程度にもよりますが、通常は体内にプレートを埋め込んで骨を固定する手術を行う必要があります。
ヒビ程度であればギプスなどの外固定でも治癒することがあります。

骨の癒合がレントゲン撮影で確認できたら、再度手術をしてプレートを摘出します。

ちょっとの不注意で二度も手術をするような大掛かりな事態になってしまいますので、高いところには登らない、高いところから飛び降りない、などのしつけを普段から行っておくことが重要です。


犬の乳腺腫瘍

メスの犬は、高齢になると乳腺腫瘍が多くみられます。
良性のものを乳腺腺腫、悪性のものを乳腺腺癌(乳腺癌)といい、犬ではその比率は半々と言われています。

乳頭の周囲の皮膚の下に硬いしこりができ、それが徐々に大きくなっていきます。
良性の乳腺腺腫であれば健康上影響がない場合もありますが、乳腺腺癌(乳腺癌)は全身に転移し、最終的に死に至ります。

診断は細胞診、または病理組織検査になります。
細胞診は注射の針を腫瘍に刺して細胞を取ってくる検査で、簡便ですが精度はあまりよくありません。
病理組織検査は全身麻酔で腫瘍を塊ごと摘出し、専門の機関に依頼して、腫瘍細胞の悪性度や分布をみる検査になります。

悪性であれば命に関わるため、乳腺腫瘍が見つかった段階で早期の手術+病理組織検査をお勧めすることがほとんどです。

悪性であっても、早期発見により完全に切除できれば完治する腫瘍です。
しかし発見が遅れ、全身への転移が認められた場合、治療は困難です。
外科手術で完全切除が出来なかった場合や転移が認められた場合に、化学療法(抗癌剤)を検討することもありますが、完治させるには至りません。
また稀なケースですが、炎症性乳癌といって手術が出来ないタイプの乳癌もあるので、注意が必要です。

できてしまうと大変な乳腺腫瘍ですが、発生率(良性・悪性とも)を早期の避妊手術によって激減させることができます。
避妊手術までの間に発情を経験させる回数により、0回で0.05%、1回で1%、2回で24%まで抑えられることがわかっています。それ以上発情を経験してしまうと、予防効果は期待できないと報告されていますので、避妊手術を考える場合には、なるべく早期の手術が推奨されています。


爬虫類のクリプトスポリジウム症

クリプトスポリジウムは原虫というごく小さな寄生虫の一種で、様々な爬虫類に対して致命的な消化器疾患を引き起こします。
海外のペットショップにおける爬虫類の死因において、トカゲで44.4%、ヘビで6.7%、カメで4%を占めるといわれています。
国内では特にヒョウモントカゲモドキの発症が多いとされています。

一般的な症状としては、嘔吐、下痢、食欲不振が見られます。
発症初期には食欲があるにもかかわらず体重が減少していくというのが特徴で、末期には重度の削痩を示したり、突然死してしまうことがあります。

クリプトスポリジウムは単純な糞便検査で検出されることもありますが、検出率が低いため、当院では疑わしい子に対して遺伝子検査(RT-PCR法)を実施しています。

効果的な治療法は現在確立されておらず、抗生物質、補液や強制給餌などの支持療法を中心に行います。
基本的には予後不良ですが、根気強く治療を継続すると治癒したという例も報告されています。


犬の潜在精巣

犬の精巣は、出生時には腹腔内にありますが、生後30日ほどで陰嚢内に下降してきます。
潜在精巣とは別名陰睾(いんこう)ともいい、精巣が片側または両側とも陰嚢内に下降せず、腹腔内または鼠径部に停留することをいいます。遺伝するため、繁殖に用いないことが重要です。

また、潜在精巣は正常な精巣と比べ約13倍も腫瘍化しやすいというデータがあります。精巣の腫瘍は悪性のものも報告されています。
精巣が腹腔内にある場合は開腹手術になってしまいますが、腫瘍化しないうちに早めの去勢手術をおすすめします。
当院では生後半年頃での去勢手術を推奨しています。ワクチン接種とあわせてご相談ください。


ハリネズミの口腔内腫瘍

一般に動物は高齢になると、腫瘍の発生率が増加します。
ハリネズミでもそれは同様ですが特に口腔内腫瘍の発生が多いとされています。
ハリネズミの口腔内腫瘍は扁平上皮癌や悪性黒色腫、骨肉腫など悪性のものも多く報告されています。

口腔内腫瘍が大きくなると、採食困難、口腔出血、流涎や歯の脱落などの症状が見られます。

腫瘍の診断には細胞を顕微鏡で確認する検査(細胞診)が必要になるのですが、丸まってしまう子の場合は鎮静や麻酔をかけなければ検査ができないこともあります。
鎮静や麻酔には多少なりともリスクが伴われるので、本人の体調をよく見ながら実施することが重要です。

治療方法は腫瘍の種類にもよりますが、外科的な切除やレーザーメスでの蒸発、もしくは内科的な抗がん剤や消炎剤での治療が中心になることが多いです。

丸まって顔を隠してしまい症状を見逃しやすいハリネズミですが、変わった様子があれば早めにご相談いただき、早期発見につなげていきましょう。


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